刺青 ---「あやや」の魅力に陶酔

監督は、邦画史に燦然と輝く名匠・増村保造。
脚本は、初代“名台詞”脚本家の新藤兼人。
撮影は、数々の巨匠達と組んだ宮川一夫。
そして、原作は、谷崎潤一郎の「刺青(しせい)」。

あややの美しさと独特の台詞回しは、
増村・小津の下でこそ活きる、と、再確認。
やっぱり、両巨匠は女優を撮るのが上手い。

そして、TVドラマの真面目なオジサン役でしか
印象の無かった「山本学」の彫り師が凄い存在感だった。
墨を彫る仕草と翳のような立ち居振る舞いに、胸がゾクゾクした。

この作品を観て、江戸の深川(岡場所)に興味が涌いた。
時代考証完璧の「海は見ていた」では、何も感じなかったのに。
葦、泥水、貝殻、女郎の白粉、内堀、掘割、猪牙船、 材木問屋、
木場、川並、どぜう、うなぎ・・・ 想像しただけでもワクワクする。
いつか、古地図片手に歩いてみたい。

艶かしく蠢く女郎蜘蛛の刺青と、フィルムに沈殿する陰翳・・・
宮川一夫の圧倒的美意識に触れるだけでも、観る価値大。
---この作品の名台詞---
「あたしゃ、素足が好きなんだよ。芸者みたいで粋じゃないか」
刺青といえば、かの白洲正子さんが研究していたようです。
どんな視点で刺青を見ていたのか・・・非常に興味がある。
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