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心中天網島

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大坂の遊女の歴史を調べていると、絶対に近松門左衛門が出てくる。
近松といえば文楽(人形浄瑠璃)、文楽といえば大阪を代表する文化。
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近松の仕事を辿ってゆくと、遊女塚・馬関・惣嫁・戸ノ内・神崎・新在家・住吉・江口など・・・

私の地元から近い場所や興味深い史実が目白押しで、無限の広がりがある。





前置きが長くなったが、近松の代表作といえば「心中天網島」。

この不朽の名作を、篠田正浩がATGで映画化している。

篠田正浩は邦画界屈指のインテリだが創作のセンスに乏しく、

駄作を次々に垂れ流した。(金集めの才能は一級品)

引退作の「スパイゾルゲ」は、日本にラジー賞があったら

満場一致でグランプリに輝いただろう。

だが、「心中天網島」と「槍の権三」(ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞)だけは、

世界に冠たる傑作と言っても過言ではない。

この2作限りで引退してたら、伝説の映画監督になっていたと思う。

(長谷川和彦のように)









この作品は徹底的に重い話だが、凄まじいまでの美しさを秘めている。

まず、“外部”の魅力に触れたい。

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身震いするような武満徹の音楽と、河鍋暁斎に造詣が深いイラストレーター、

栗津潔のデフォルメされた美術が素晴らしい。

遊廓をアブストラクト&モダンな美術作品として表現し、

陰翳を上手く活かした成島東一郎のカメラが、それを最高に美しく撮っている。







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それにしても、冶兵衛を演じた中村吉右衛門の“遊冶郎”っぷりには舌を巻いた。

上手いなぁ。

この藝術的なダメっぷり!

たぶん、江戸期には最下層の遊女に入れあげ、情死した男が沢山いたのだろう。



大体、心中する男というのは精神の根っこが腐って荒誕だから、

弱々しく嘘つきで、口が達者である。

だから、女の優しさに付け込む事でしか生き甲斐を見出せないのだ・・・

何とも人間的で愛らしいではないか!

(それを見事に体現した中村吉右衛門に惚れた・笑)









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圧巻は、一人二役を完璧に演じ分けた岩下志麻。

その表情、

その哀婉、

その激情、

その着こなし、

その台詞回し、

その立ち居振る舞い、

そのエロティシズム・・・

全てが秀逸。

「コーヒー&シガレッツ」のケイト・ブランシェット以来、

久し振りに「一人二役」の凄さに感動した。









そして、この作品の“肝”は、黒子である。

文楽では「影の存在」である黒子が、「主役」になっているのだ。

この演出無くして、文楽を映画たらしめる事は出来なかったであろう。













※ロケ地に注目!



山口県の錦帯橋。(冒頭のシーンは、あまりにも、あまりにも映画的)

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岡山県の倉敷市。(土蔵の朽ちっぷりと、照明の対比が素晴らしい)

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京都の木津・流れ橋。(今まで観た映画の中で一番効果的に使われている)

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京都・鳥辺山(野)の墓地。(監督は、この墓地の特性を良く分かってる)

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何故か、知恩院の大釣鐘。(是非、このシーンを観てぶっ飛んでください)

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